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2025.11.13
第37回(2025年11月9日)開催報告
全体報告
11月9日に開催された第37回とちぎ蔵の街校では、小学生クラス6名、中高生クラス1名、社会人クラス11名の計18名の学習者が参加しました。スタッフは3クラス合わせて18名でした。また、この日はT女子高校から教員と生徒各1名、K短期大学から教員1名と学生3名 合わせて6名の方々が見学に来ました。今回は、特に社会人クラスのスタッフ数が足りなかったため、他クラスのスタッフや見学に来られた方々から応援いただき、今回も活気あふれる楽しい学習交流活動となりました。朝のミーティングでは、スタッフYさんが音頭をとって新しい試みをしました。今月の歌「線路は続くよ どこまでも」の1番を学習者もスタッフも全員立ち上がり、手をつないで仲よく元気に歌ったのです!! この日はTTコンビが不在だったのですが、スタッフHさんからYouTubeによる伴奏の提供があったおかげで安心して歌うことができました。
ふりかえりのミーティングでも、Yさんの音頭で「線路は続くよ どこまでも」の1番を、今度は手拍子を添えて朝と同様に全員で立ち上がり歌いました。手拍子は3パタンがあり、①「パチパチパチパチ」、②「パチ_パチ_」、③「_パチ_パチ」[③は②の裏パタン])で、好きなパタンを選ぶというものでした。私は①から始めたのですが、途中から合わなくなり、一拍の休止を入れるパタンになったのですが、それも②か③なのかよく分からなくなってしまいました。音感のなさを実感した次第です。でも楽しかったです!!
今回の開催報告の末尾には、いつもの写真(静止画)7枚に加えて、新たに動画2点を掲載していただきました。順番は、動画1(朝の全体会)⇒写真7枚(小学生クラス5枚と社会人クラス2枚)→動画2(ふりかえりの全体会)です。いつもの写真に加えて、躍動感と一体感あふれる動画もぜひお楽しみください。(佐々木一隆)
小学生クラス
こんにちは小学生クラスに初めて参加させていただきました!最初はとても顔も体も強張っていましたがゲームを通して楽しく日本語を学ぶクラスの皆さんをみて自分自身の緊張がほどけ、多くの学びを得ることができました!さぁそんな本日のクラス活動では、ひらがなカードを引きそのひらがなから始まる言葉を言うゲームや、ホワイトボードでのしりとりバトルを通して日本語の語彙とひらがなの書き方をみんなで学びました!!カードゲームでは縄跳びをマイクにしてポイントを競いました。一位の子にはご褒美があるといってそのご褒美をゲットする為にみんな積極的に単語を発している場面が多く見られました!!しりとりではひらがなの書き方を楽しく学んでいました。そのあとしりとりのご褒美であるコースターにみんなでお絵描きをしました!お姉ちゃんへの絵や地球、自販機の絵などみんなの中にある様々な想像力を働かせお絵描きを楽しんでいました!!最後になりますが今回の活動の参加は自分にとって大きな気づきと学びを得ることができた経験となりました。そして今後ともこの夜間中学に参加したいなと思いました!!(T)中高生クラス
この日の中高生クラス学習者は中1の男子一人でした。丁度テストの時期が影響したかも知れません。学習者はフィリピン人で来日一年半です。日本語は良く話せますが、学校の教科書に出て来る漢字の読みと意味が覚えられず困っており、漢字は苦手だそうです。そこで、この日は漢字の成り立ちと表意文字、象形文字、表音文字を念頭に入れながら 中1国語教科書の中から今習っている個所の漢字を取り上げ、読みと意味を勉強しました。例えば、「木が古くなるとどうなる?」と聞くと生徒は「葉が落ちて枝が折れたりする」と答えます。「そうだよ!木ヘンに古いと書けば ”枯れる(かれる)” となるんだ!」と教えます。
そして、漢字一字で送り仮名が付いていれば訓読み、漢字が二字以上なら音読みになるのが殆どとか、漢字一字には少なくとも2~3つの読み方がある、だから中国人でも日本語は難しいと言っているくらいだから心配するなと言ってあげる。するとフィリピンの生徒は、タガログ語は同じ文字(アルファベット)でも発音の強弱で意味が違いますと、教えてくれた。授業の最後に”ばら”を漢字で書ける人は、日本人でも10人に一人ぐらいしかいない!彼はバラが英語と思っていて、(ローズ)にも漢字があるのかとビックリする。バラは漢字二字でいずれも植物だから草冠(くさかんむり)で縦横に枝があり中にトゲがいっぱいあり、下の方は根が団子のように丸まっていると実際に書いて見せる。
生徒は ”面白い!” と言って、画数を数える。”2字とも16画だ!これはすごい!覚えきれないよ” とこれで漢字に興味を持ち少しでも覚えようとすれば大成功!つぎに出て来た漢字の読みを聞き同時に漢字の成り立ちと意味を聞いて来る。この方法では週1回の夜間中学で覚える漢字の数が知れているが、学習者が学校で友達に聞いたり、自分で調べるようになれば覚える漢字は数倍になるのでは?(余談ですが、私は過去、小中学校に出向き外国籍児童生徒に日本語を教えていた時は、彼らにクラスで成績上位の日本人と友達になれ、そうすればいろいろと教えて貰えて助かるよ!その代わり母国の言葉とか遊びとか文化を話してあげることだと、成績上位の友達は必ず興味を持ちギブアンドテイクになると)(村田孝)
社会人クラス
〇学習者は11人。全体の支援者は18人。今回はK短期大学の先生と学生さん3名と、T高校の先生と生徒さん1名が参加してくれた。社会人クラスは毎回支援してくれている支援者に休みがでたので学生さんに支援してもらう。
学習が始まる前に全体のミーティングが始まる。この時に学習者と支援者が初めて顔を合わせた。先ず気になるのは学習者が何人来ているかということだ。今日は社会人の支援者が少ないのでどこかのクラスから支援してもらわなければならなかった。いつも来ている学習者の姿が何人かあった。少なくともこの時点で学習者が支援者の数を上まっていた。
毎回参加しているKさんの席に近づいて挨拶を交わした。いつもの挨拶は握手をすることだ。先に手を差し出すと彼は仕事焼けした手で力強く握り返してくれた。その後、丸い目を向けて「元気ですか」と声を掛けてきたので同じように「元気です」と返した。
この一連の挨拶がルーティーンとなってしまった。彼は蔵の街自主夜間中学の開校以来休まずに通い続けている。インドから来て日本の会社で働いている。最初は片言の日本語しか喋れなかった。文字も書くことも読むこともできなかった。「あいうえお、かきくけこ」のひらがなから始めた。彼はやる気があるのでどんどんマスターしていった。Kさんの支援はTさんが支援している。Tさんの熱い支援があって、来年の7月にN5の試験を受けるという。N5を受けるには漢字も習いたいと積極的に漢字を習い始める。
今回も足もとを見るとサンダルに履きに素足だった。服装も夏のような薄い長そで上着は着ていなかった。雨が降っているから「寒くはないですか」と掛けると「寒くないです」とさらりとかわされてしまった。まだ、言葉の壁があるので彼の本心は伺うことはできないのがもどかしく感じた。
彼の友達のNさんの姿は見えないので訊ねたら、前回と同じ言葉が返ってきた。つまり、朝寝坊したので車を運転してくると教えてくれた。その後Nさんが息を弾ませて辷りこむようにやってきた。彼もこのところ毎回参加している。Kさんにつられて学習する気になってきたかもしれない。彼を支援していたIさんが休みなので、誰に支援してもらおうかと巡らしてみたがこの時点では見当たらなかった。
ミーティングが始まると「線路はつづくよどこまでも」もの合唱が始まる。いつもならTTさんコンビの下で合唱するのだが、二人とも休みなのでスマホのアプリを使っての合唱となった。今回はかなり変化をつけて、全員で手をつなぎながらの合唱だ。初めての試みに童心に還ったような気恥ずかしさを覚えたが、ひとの温もりを感じることができた。となりのKさんと男同士で手をつないだ。小学校の校庭で踊ったフォークダンスを思い出す。さらに手を叩きながらの合唱だ。叩き方も3種類あった。続けて叩く方法と1拍おいて叩くのと更に2拍おいて叩く方法だ。最初は続けて叩いたのだがそのうち1拍と2拍に変えたらいつしか曲に合わなくなりめちゃくちゃになってしまった。音感のなさを実感した。
学習が始まると2人が入ってきた。前回も来てくれたスリランカ人だ。前回支援してくれた支援者が休みなので誰をマッチングすればいいのか迷ってしまった。今回の責任者のSさんに相談にいった。大学生に応援をしてもらうことになった。大学生は小学生のクラスに固まっていた。先生と3人の学生さんが駆けつけて支援してくれた。
フィリピンのAさんの支援は、近くにいたSさんにお願いしたら突然の出来事だったのでかなり驚いていた様子だった。学習が終わって突然押し付けてしまったことをSさんに詫びたら「今度は高校生の息子を連れてきます」とかなり前向きな答えを返してくれたので安堵した。
学習が終わってからAさんと少し会話をすることができた。彼女も日本語はたどたどしいがゆっくり話をすると理解をしてくれる。以前勤めていた会社を辞めて仕事を捜していたら大手の自動車会社に就職ができたという。明日から勤めると満面に笑みを浮かべた。以前勤めていた会社は自動車の部品を作っていて、そこでフォークリフトに乗っていたと力を込めて答えてくれた。従業員が10人くらいしかいなかったのでフォクに乗らざるをえなかったとか。
「フォクに乗っていたの。とてもオレなんかフォクなんて乗れないよ。凄いね」
「今度の会社でもフォクに乗ります。前の会社で乗っていたからだいじょうぶです」と強い目力で返してくれた。フォクは男が乗るものばかりだと思っていたので驚いた。
すると、「もっと日本語をうまくなりたいんです」と素直に口にした。
「それでは日本人とたくさん会話をすればうまくなりますよ。出来るだけ自分から話しかけるようにすれば自然とできるようになりますから」と彼女の求めている答えではないような気がしたが今はこの答えしか返すことができなかったのが歯痒く感じた。
「新しい会社に勤めるようになったら教室には来ないのですか」と言うと、「日曜日は休みなので来ますと」とまた緩い笑みを浮かべた。これからは日本の労働人口が減ってゆくばかりだからやる気のある外国人に頼らざるをいないのではと思う。
新しく入ってきた中国人の女性は大学生に支援してもらった。彼女も日本語を学びたいという。漢字の意味は大体わかるが読み方と接続詞の使い方が分からないという。中国語には接続詞はないという。支援してくれた学生さんが納得いく説明をしてくれたので助かった。学生さんたちは1時間で帰ってしまった。先生だけが残ってくれた。3人足らなくなってしまった。SさんとYさんが応援に駆けつけてくれたので何とか最後まで支援することができた。
今回もKさんを支援した。今回で3回目になる。Kさんは30年間日本に住んでいるので大体の日本語は理解することはできた。難しい漢字は読むことが分からないと素直に声にした。日本人でも読むことができない漢字や書くことができない漢字がたくさんあるからと口にすると白い歯を見せた。彼女はさっそく自分から歴史の教科書を捜してきた。中国の古代文明とギリシャとローマ文明を読みながら学習した。彼女は中国の思想家の老子と荘子が好きだという。2人の思想家は人間の生きる道を説いているという。日本人には孔子の方が知られていて「足利学校」には像が祀られていると口に出すと「行ったことがある」と直ぐに返ってきた。
「中国から日本はいろいろ学んだりしたりして関係が深いね」というと「私は日本のほうが好きです」と嬉しい答えが返ってきた。
彼女が子供の頃にシルクロードの番組が流されたという。「あの番組はよかったよね。日本のテレビ局がタクラマカン砂漠をラクダで渡って撮影したんだから凄いね」と深く感動していた。そういえばいい番組だったという記憶が蘇ってきた。シルクロードは洛陽から長安、敦煌、楼蘭、クシャナ―、ローマと続いている。シルクロードの名は中国で生産された絹織物の貿易に由来しているといわれている。絹のほかに宝石、香辛料、馬なども取引されたという。
「敦煌に旅行に行った友達から五色の砂を貰ったことがあるの。砂に色がついているの。日本では観光地から持ってきてはダメなんでしょう」と思わぬことを口にした。
「日本では多分勝手に持ってきたら罰せられえるかもしれないね」というと頷いてくれた。
それにしても砂をお土産とは中国人の悠久の感覚に戸惑う。(国母仁)
〇先月までは、第二日曜日はお休みだったので、学習者が来てくれるだろうかと心配でしたが、たくさんの学習者が来てくれました。今日は、二人の学習者を担当しました。二人ともとても熱心な学習者で、二人とも日本語能力検定試験4級を受験予定です。そのためには文字・語彙・文法の知識を習得しなければなりません。今日は可能動詞(可能動詞とは「食べます」⇒「食べられます」という言い換えのことです)と呼ばれる文法を学習しました。動詞の変換の練習をしていた時です。一人の学習者が「待つ」と「持つ」の漢字が間違いやすいと言ったことをきっかけに、今度は「ぎょうにんべん」「てへん」などの部首の話になってしまいました。今日の学習予定ではなかったのですが、興味があるものをフレキシブルに学習できることが個別学習の利点です。さっそく私の思いつく部首の説明をしました。しかし、予定にない学習だったので、十分な説明ができないでいると、隣で聞いていたスタッフが助け船を出してくれました。「皆ができることをやる」という自主夜間中学ならではの出来事でとてもうれしい出来事でした。(矢部昭仁)