2025.11.7

第36回(2025年11月2日)開催報告

全体報告

 11月2日に開催された第36回とちぎ蔵の街校では、小学生クラス7名、中高生クラス6名、社会人クラス7名の学習者が参加しました。スタッフは3クラス合わせて18名。この日は、小学生クラスと中高生クラスのスタッフ数がやや足りなかったため、他のクラスからの応援があり、今回も最後まで活気あふれる楽しい学習交流活動となりました。
 朝のミーティングでは、今月の歌と称して「線路は続くよ どこまでも」(佐木 敏 作詞、アメリカ民謡)を歌いました。「前を向いて歩こう」「手のひらを太陽に」「切手のないおくりもの」に続いて4曲目となります。歌の解説と独唱による実演のあと、「線路は続くよ どこまでも」をみんなで元気に歌いました。伴奏はおなじみのTTコンビが鍵盤ハーモニカとギターで行いました。歌詞の1番は「せんろはつづくよ どこまでも のをこえやまこえ  たにこえて  はるかなまちまで ぼくたちの  たのしいたびのゆめ つないでる」です。
 ふりかえりのミーティングでは、スタッフSさんから小学生クラスの楽しい様子を伝える報告がありました。また、「線路は続くよ どこまでも」は、後半部の「ラン ララン ララン ラ ランラランララン ラ ランラランララン ラ ラン ラン ラン ・・・」も取り上げて、1番の歌詞を最後まで通して歌うことができ、達成感も得られました。
 11月から蔵の街校も(宇都宮校や宇都宮大学内の多様な学び教室と同様に)毎週開催することになりました。基本的に毎月4回開催されます。今月はなんと5回あります。また、毎週開催となったため、今週参加できなくても次週も休みなく開催されるので、すぐに学習を挽回できるという望ましい状況も生まれました。これを機にさらに多くの方々の参加をお待ちしています。(佐々木一隆)

小学生クラス

 本日、小学生クラスの参加者は5人の女の子と2人の男の子、計7名でした。
 Hちゃんは今日も朝と帰りのお歌の時間にみんなの前で歌に合わせて踊ってくれました♪Hちゃんのダンスは毎週の恒例行事になりそうです。
 クラスでは折り紙でお花を作ったり、紙飛行機を作ってみんなで飛ばしたり、椅子を使ってお店屋さんごっこをしたり、、、 ☆また、お勉強の教え合いをしている子もいてみんなで楽しい時間を過ごせました!(Y)

中高生クラス

 中高生クラスの6名は、中学1年Kさん(フィリピン)、高校1年Aさん(パキスタン)、中学3年Sさん(バグラデシュ)、中学2年Eさん(フィリピン)、高校1年Sさん(バングラデシュ)、中学2年のBさん (ネパール)でした。
 フィリピンのKさんとパキスタンのAさんは中高生スタッフのYさんが担当することになりましたが、Yさんは小学6年(ネパール)Kさんの応援も依頼されました。このため、Yさんは小学生クラスの部屋に場所を移して3名の応援をしました。
 小学6年のKさんは、まず「学習者情報」シートに記入してから、「反対ことばカード」を使って学習しました。最初はスタッフのYさんとのやりとりをしました。中学1年Kさんも、まず「反対ことばカード」でYさんとやりとりをしましたが、その後、小学6年Kさんに同カードの出題をしたり、数のかぞえ方などを教えたりしたそうです。高校1年Aさんは、授業プリントの解説と用語へのかなふり、日本語学習用プリントについてスタッフYさんから応援してもらいました。興味深いことに、Aさんはさらに小学6年Kさん出題による反対語クイズに答えることもしました。スタッフYさんから当初学習の応援支援を受けたおかげで、3人の学習者どうしが互いに学び合うようになった姿は微笑ましく、頼もしくもあります。
 バングラデシュのSさん(中3、妹)は中高生スタッフMさんが応援しました。学校の教材を使って関数の基本を学び、問題集で日本語の助詞の使い方も学びました。来日1年半ですが、日常会話はよくでき、漢字交じりの文も半分ほど読め、日本語の文法も半分程度分かっているとのことでした。すばらしい進歩です!
 フィリピンのEさん(中2)は中高生スタッフTさんが応援しました。『未来へひろがる サイエンス2』の教科書を用いて、3. 運動のしくみ(骨格と筋肉、運動のしくみ)について学びました。用語の意味が理解できないものが多かったが、問題の解答は良かったので、理解はしていると感じたそうです。ことばの壁があるのに、こうした理解力があることは強みの一つだと思います。
 バングラデシュのSさん(高1、姉)は中高生スタッフの私が応援しました。テキストは『新生物基礎』です。ホルモンの働き、血統濃度の調節、体温の調節などの哺乳動物の生命にかかわることをいっしょに学びました。併せて、「症状」や「現れる」の漢字の読み方を伝え、それぞれの意味を英語で確認しました。さらに、テキストに「減少」が出てきたら反意語が何かも聞いてみました。教科学習の中で日本語の一般語や専門用語の語彙も増やすように心がけています。Sさんは漢字の書き順にも関心があり、『常用漢字筆順辞典』を紹介しました。よりきれいな字をスムーズに書けるようになることを願っています。なお、時間が足りず、免疫と医療の学習はできませんでした。12月には期末テストあるそうです。そのことも念頭に置いて、これから免疫と医療の学習を進めていく予定です。
 最後に、ネパールのBさん(中2)は、社会人クラスの部屋で、いつも社会人を担当しているTさんに応援していただきました。参考にしたテキストは『まるごと:日本のことばと文化 入門A1 かつどう』です。大人と違い、やはり集中は1時間程度かなと思い、学生は少し気分を変えて行うことが大切かなという意見をいただきました。(佐々木一隆)

社会人クラス

〇学習者は7人
 全体の支援者は18人
 インド人2名、中国人2名、フィリピン人2名、ネパール人1名
 全体のミーティングの後に合唱をする。今回の曲は「線路はつづくよどこまでも」とかなり前向きな曲だ。まるで夜間中学を連想させるようなポジティブな歌に癒される。Tさんが黒板にひらがなでうたを書いてくれた。これならほとんどの人が読める気がした。更にTさんギターに合わせて指揮を始める。体を揺らしながらまるでダンスをしているかのように指揮をする。
 そこに、毎回前に出て踊っていたHちゃんをよびよせると少しはにかみながら前に出てきて二人で踊り始めた。Hちゃんはまるでボールようには弾んでいた。自然な弾みだった。二人のパフォーマンスに全員が釘付けにされてしまった。学習を始める前からテンションがマックスに達してしまった。今回はHちゃんの父親が見学に来てくれた。
 今回気になったのは毎回参加してくれていたHさんの姿が見えなかったことだ。そういえば前回も休んだのでますます気懸りになってきた。毎回支援していたSさんに彼女のことを伺うとなんの連絡もありませんとのことだった。
 彼女は蔵の街自主夜間中学が開校してから日本人として参加してくれていた。何回か支援したことがあった。今まで学ぶ機会がなかったので学びたいとの意欲を強く持っていた。先ずは小学6年生の国語の教科書から始めた。太宰治の「走れメロス」が載っていたのでゆっくりと読み進めていった。わからない漢字が出てきたので辞書を引くことをアドバイスした。何とか読破することができた。今まで本を読んでなかったというので読破できたことに満足をしていた。最初は読み方もたどたどしかったが慣れてくると滑らかになってきた。本を読む喜びを知ったように思えた。読み終えてから、子供の頃のことを口に出してきた。家が貧しかったから進学をあきらめて義務教育を終えると都会に出て行ったという。確かに日本も貧しかったから彼女のように進学を諦めて都会に出て行った人が多かったのではと深読みをする。
 日本人のもう1人のFさんの姿も見えない。Fさんは後期高齢になってから英語を学びたいと意欲を燃やしていた。学ぶことは年齢に関係ないということをFさんから教えてもらった気がする。2人の日本人が抜けてしまったのは寂しい限りだ。
 新しく来てくれた人がいた。彼女の出身はフィリピンのミンダナオ島と教えてくれた。現在は働いてないという。仕事を捜しているようなことを口にした。会話はぎこちないが何とか成立できた。文字を読んだり書いたりすることが苦手のように受け止めた。そこで日本人のHさんを支援していたSさんとTさんが支援してくれることになった。
 そこにSさんが中学1年生のTさんを連れて来た。彼女は漢字を習いたいとのことだったのでTさんに支援してもらうことになった。Sさんが小学生用の漢字の辞書を持ってきてくれたので書き順から丁寧に教えてもらう。漢字を一気に覚えようとして息切れしてきたのか席を外して、隣の中高生の教室にいってしまった。戻って来ないのではと諦めかけていたら数分後に戻ってきた。漢字が読めないと意味が分からないから授業についていけなくなってしまうのではと慮る。漢字は根気よく覚えないとなかなか身に付くものではないと思う。日本人でも読むことはできるが書くことはできないというのをよく耳にする。確かに普段書いていないと書けなくなってしまうことはよくあることだ。今はパソコンに打込むことが多くなってきているから書けなくなっているのは確かだ。
 「凄いね。全部書いたの」と声を掛けると恥ずかしそうに小さな笑みを浮かべた。ノートにはしっかりと綺麗な文字が書かれてあったので彼女のやる気が伝わってきた。
 学習が始まる前にKさんの隣の席に座る。座ると直ぐに握手を交わす。これがいつものルーティーンとなってしまった。Kさんの足もとを見ると素足にサンダル履きだ。11月に入ったのにサンダル履きとは寒くないのか心配になってきた。
 「靴下をはかないで寒くないですか」と声を掛けると「だいじょうぶ。さむくないです」と笑みを浮かべた。彼の国は温かい国だから寒さには弱いのではと思ったが、「心配いらないよ」というような自信に満ちた顔を覗かせた。
 学習が始まると支援者のTさんと一番前の席に移動してきた。目立つ席だ。2人は事務所からラジカセを借りてきた。一体何を始めるかと聞いてみたらN5の学習を今日から始めるので、N5の中に入っているCDを聞くためとのことだった。そういえば前回の学習で支援してくれたRさんにN5を始めたいと打ち明けたことを思い出した。とうとうN5に挑戦する気になったのかと彼の本気度が熱く伝わってきた。Tさんの熱心な支援が実を結んだのだと受け止めた。
 「百、千、万、円、月、火、水、木、金、土、日、牛肉、豚肉、一、三、五、七、九」とノートにびっしりと書かれてあった。全部Kさんが書いたものだという。書き順から教えてもらったという。
 Kさんの友達が遅れてやってきた。寝坊して車を運転してきたとKさんが教えてくれた。Nさんは口数がすくなかった。Kさんのようにドンドン会話すれば日本語も上達するのだがと思ったが、彼のナイーブな性格を尊重することにした。「今日もよろしくね」と手を差し出したら緩い笑みを浮かべた。
 N4のSさんとAさんは隣の中高生の教室に移動していった。TさんYさんNさんの熱い支援を受けていた。2時間があっという間に過ぎてしまったくらいの戦いだったのではと見守っていた。
 今回もTさんの支援をする。彼女は自分から歴史の教科書を探してきた。前向きな姿勢にやる気が感じ取れた。彼女は本を読むのがすきという。特に星の王子様を何回も読んでいるという。世界で聖書に次いで星の王子様が出版されているとマニアックな情報を教えてくれた。名前は知っているが読んだことがなかったから内容には入り込むことはできなかった。作者がフランス人というのは知っていた。彼女の星の王子様に対しての入れ込みように刺激されてぜひ手に取ってみたくなった。中国人は世界で1番か2番目くらいに人口が多いので中国語を話す人が多いという話になったが通用する言語は英語が1番と纏まった。中国ではかなり早くから小学校で英語の授業をおこなってるという。試験のための英語だからトークのできる人は少ないと打ち明けた。その点は同じのように思った。日本人も英語を学んでもトークは苦手だ。中国も日本もトークが苦手で纏まった。
 新しい歴史教科書を開き世界の古代文明と宗教のおこりを読み進めた。原人は250万年前に絶滅し新人のホモサピエンスが出現したとあった。同じページにはラスコの壁画が載っていた。Kさんは初めて見たという。中国の教科書には掲載されていないのかそれとも彼女が単純に忘れてしまっただけなのかもと思った。中国の教科書にはいったいどんなことが載っているのかますます興味が湧いてきた。学習の合間に短編小説を読んだ。是非中国語に訳したいと口にした。ここにも日中友好が生まれた気がした。(国母仁)

〇私の属するグループは、スタッフ3人で大人の学習者4名を支援しています。このグループの学習者はほとんど休まずに教室に来ています。大人の学習室は人数が結構多いので、はみ出すとき(ほとんどはみ出しています)は、中高生の部屋の一部を間借りしています。今日も間借りしました。この場をお借りしてお礼申し上げます。
 11/2は、支援スタッフ3名で学習者3名を支援しました。学習者の内2名はN4を目指していて、学習内容のレベルが上がってきました。特にAさんは会話が上手で語彙も豊富であり文法の問題もよくできます。Aさんは面倒見も良く、いっしょに学習している方にヒントを与えたり答に導いたりしています。国が違い年齢も違う方々がこのように助け合いながら日本語を学習するところが感動ものです。スタッフのTさんとYさんが主に担当しましたが、教材を工夫しての熱心な支援が印象的でした。私が担当したFさんは、日本に来てからまだ5カ月余りですが、教室にはほとんど休まずに来ています。雨の日でもレインコートを着て自転車で来ます。このように熱心ですから、もう日常の簡単な会話はできるようになりました。何を学習したいかも自分なりにしっかりと決めていて、「蔵のまち教室」では、文法と会話を中心に学習したいとのことです。
 私の力不足もあり、学習者の希望になかなか沿えないところがありますが、いっしょに学習する感覚で、間違いを指摘されたりしながら取り組んでいます。自身で努力するとともに、この教室には多くの優れたスタッフの方がおられますので、其の力を大いに拝借して可能な限り学習する方の要望に沿った支援が続けられれば、と思う今日この頃です。(新関守)