2025.6.6

第19回(2025年6月1日)開催報告

 小学生クラス
 1日の小学生の参加は2名でした。ネパールにルーツを持つ3年生の双子の女の子たち。「何の勉強したい?」と尋ねると「算数!」と返ってきたので、ではでは・・と算数の教科書を用意しましたがなんだかちょっと浮かない表情。
「ん?」これじゃないのか?」と色々探ってみると、どうやら絵を描きたいらしく、それならまずは絵を描こう!となりました。何を書くのか見ていると、お花やさん!もう一人はペットショップ!じゃあお金を作ってお店屋さんごっに。。。と以前の経験もあって、そこからはどんどん進み、自分で値段をつけ「いらっしゃいませ!」まで出てきました。2000万円のチューリップ(笑)や10円のぞうさん(笑笑)を買いお金のやり取りやお釣りの計算で「算数」の実践も出来ました。二人とも日本語は問題なく聞き取れ、話せるけれど、きんぎょをきんぎょうと書いたりチューリップをちゅうりっぷと書いたり(こちらに関してはどっちも正しいのかもしれませんが)・・やっぱり日本語って細かくてややこしい!それに挑んでいる子どもたちに敬意を持ち、応援していきたいと改めて思いました。
 私たち応援する側も楽しくて学びのある自主夜間中学。参加させて頂いていることに感謝です。また次回、たくさんの子達が来てくれるといいなぁ(橋本まり)。

中高生クラス
 今日のクラスがスタートする時、ベテランスタッフの方から「クラスのレポートを書いてくれませんか?」との依頼があった。4月から参加した私にとっては初めての事。
 教室には当初、学習者が1~3名でスタッフが6,7名位いたので、我々スタッフにとっては余裕があった。そこで私は『全体の状況を把握して今日のクラスのレポートを作成することを自分の第一優先事項に設定』し、3か所に分かれて学習していた様子を拝見しながら、メモを取り始めた。
 しかし、スタートしてしばらくすると前週(イチゴ狩りイベントと重なったため、学習者が少なかった)とは打って変わって学習者が次々とやって来て、いつの間にかスタッフ全員が学習者につくことになった。(私は中二の数学をサポートすることになった。)レポート作成の都合もあり、時々室内を見回して学習者を数えたら9名、それぞれ8か所に分かれて学習していた。彼らの出身国、言語も多様でバングラデシュ、ペルー、ネパールなど様々。また、学習内容や年齢、環境、背景にある文化も様々である。正に、多文化共生を肌で感じたひと時だった。
 教室内は、8か所それぞれのテーブルで学習者とそれをサポートするスタッフの会話が飛び交っていて、熱気に溢れていた。学習内容の細部については、報告を割愛するがそれぞれの所で学習者とスタッフがそれぞれ最適の方法を探しながら共に学びを深めているのではないかと推察している。ついでに私自身の学びや学習者をサポートする私のスタンスをちょっと付記すると、「常に基本に立ち返って考えることが出来る力を身に着けて、それを自分なりに応用出来る力を養う」という事かなと、今日の中二の数学(連立方程式の解き方)を担当して感じた次第です(小島 正)。

 社会人クラス
 今回は12人の学習者が参加してくれました。今までで一番多かったように思います。内訳はネパール人8人。日本人2人。インド人1人。中国人1人。日本のひとは毎回参加しています。2人の学ぶ姿勢に感動いたしております。
 インド、中国のひとも休む事なく毎回参加しています。やはり、日本語を学びたいとの想いがビシビシ伝わってきます。
 ネパールの参加者の内20代の人を除いて後は30、40代です。多分、仕事を求めて日本に来たように思います。今は話すことも書くこともできない状態です。まず、ひらがなを書くことから始めました。やはり、日本語を学びたいという熱意が伝わってきて2時間があっという間に過ぎてしまい、教室は熱気で充満していました。本当に盛り上がりました(国母仁)。
 
 田巻報告
 〇令和7年度栃木市国際交流協会総会参加報告
 5月30日(金)に開催された令和7年度栃木市国際交流協会の総会に参加させていただきました。大木洋会長が、ご挨拶の中で、特筆すべき令和6年度事業として「とちぎ蔵の街自主夜間中学」の開校をご報告されまして、大変嬉しく思いました。また、令和6年度の事業報告並びに決算報告、令和7年度の事業計画並びに予算の議事についての説明を受けて、栃木市国際交流協会が「多文化が共生できる地域社会の実現に寄与する」ために、実に多岐にわたる諸事業を精力的に行っていることを改めて知りました。このような協会と連携して活動できることを大変光栄に思います。
 総会終了後、「自主夜間中学の意義と目的」を題目に話をさせていただきました。強調したかった一つの論点は、自主夜間中学と国際交流協会は「多文化共生の推進」を共通の理念としていることです。自主夜間中学と多文化共生とのつながりは一般にイメージされにくいかもしれません。しかし、年齢も国籍もバックグラウンドも多様な人々が一緒に学び・交流する自主夜間中学はまさに多文化共生的な場であるとともに、多文化共生を推進する力を育む場なのです。多文化共生を推進するためには、多文化共生を推進する力を育んでいく場が欠かせません。国際交流協会と連携する自主夜間中学づくりは全国的に例がありません。とちぎ蔵の街自主夜間中学の日頃の学習活動と交流イベントを対象に多文化共生社会構築推進の実践ノウハウを研究し、モデルを作成して発信していきたいと考えています。
 急いで話してしまったのですが、自主夜間中学の意義についても伝えました。第一に、公立夜間中学が不在の地域で自主夜間中学は貴重な学びの場を提供しています。第二に、公立夜間中学が近くにあっても、週5回通学することや開始時間に間に合うように通学することが困難な人がいます。自主夜間中学はそういう人たちの受け皿となります。第三に、自主夜間中学は学習者一人一人に寄り添う応援を徹底できる点で独自の意義を持ちます。第四に、自主夜間中学という活動において、学習者も応援スタッフも平等に異なる存在となり、その人らしさを発揮できます。もちろん第三と第四は目標でもあります。このような意義を意識しながら、前に進んでいきたいと考えています。

〇新しいチャレンジ―簿記
 「数日前に、簿記の学習を希望している高校生がいるけど、対応できそうですか」と問い合わせがありました。簿記!? 自分としては全く縁がなかった科目、対応できそうな応援スタッフの顔も浮かんでこない。でも、簿記の学習で困っている人がいれば、「対応できません」ではなく、何とか検討してみようというのが自主夜間中学。関係者と話し合い、教科書を一緒に読んで学んでいくことで少しは応援できるのではないかと意見がまとまりました。この日は社会人の参加が多く、慌ただしくしているなかで、簿記の学習を希望する高校生が母親と一緒に現れました。スタッフの大半は学習者を応援しており、結局、自分が簿記の世界へ!話を聞くと、来週試験があるという。教科書をゆっくり一緒に読んで学んでいく余裕がない。この日は、解答用紙の回答や教科書の内容を確認しながら、配布されたプリントの練習問題に取り組みました。学習用語は「現金」、「買掛金」、「売掛金」等。「かけ」や「つけ」という懐かしい言葉に触れました。自分が生まれ育った炭鉱町は「つけ文化」であったことを思い出しました。自宅近くの岩森という店で食材を飼うのですが、毎回の買い物は「つけ」で父親の月給が入った時に支払っていた記憶があります。住民同士顔見知りで、コミュニティーのようなものが成立していた町の固有な文化という側面があったでしょう。応援スタッフの一人が「難しいようなら、自分が簿記にチャレンジしてみます」と言ってくれました。はい、でも、自分もチャレンジしてみます。

 〇「オオカミを見る目」と「狼なんて怖くない」
 6月1日の宇都宮校(宇都宮市、夜間開講)での話ですが。中国籍の中1生徒と国語の学習をしました。詩に関する文章と「オオカミを見る目」という文章を一緒に読みました。「オオカミを見る目」では、日本とヨーロッパではオオカミに対する社会の目が全く異なっていたこと、日本では昔オオカミは「大神」とも言われ敬われる存在でしたが、時代・社会状況の変化の中でずる賢くて悪い動物という目に変わったことなどが書かれていました。日本では昔カラスが神の使者としてステータスの高かったのですが、現在は、嫌われ者で縁起の悪い鳥と見られている話しを思い出しました。『栃木から世界をのぞく』(下野新聞新書、平成17年)のなかに当時宇大農学部教授だった杉田昭栄さんが「カラスに学ぶ都市生活―ごみ問題への一つの警告」という興味深いエッセーを書いています。
 それはともかく、「オオカミを見る目」の感想などを話していた時に、ふと、石野真子の「狼なんか怖くない」という歌を思い出したのです。「知っている?」ときくと、当然のように「知らない」。発表されたのは、1978年ですもんね。大好きな歌だったので、スマホで小さい音量で一緒に聴きました。懐かしくなり、帰りの車中でもずっと聴いていました。それにしても「あなたも狼に変わりますか、あなたが狼なら怖くない」という歌詞は凄すぎませんか??ここでの狼は可愛い女の子を襲ってくるイメージ。そして、「怖くない」という女の子の胸中は? 阿久悠という作詞家のことを少し調べてみたい気になりました。

 〇遠友夜学校校歌3番
 3番で「オー 否 否 否」と否定されたものは、「黄金をちりばめ玉をしく 高どのうてなはまばゆきに のぼりて貴き位やま 世にうらやまれん其時か」。よく歌われる1番と5番の歌詞から、校歌全体の内容が、人の目指すべきは「富」でも「地位」でも「名声」でもない。正義を愛し、清き心で人のためにつくすことだと伝わってきますが、3番でも「黄金」、「玉をしく」、「清き位」などが「否」と語られています。ところで、ご存知の方も多いとは思いますが、「遠友」という言葉は、孔子の『論語』のなかにある「友あり遠方より来る、また楽しからずや」から由来したといわれています。論語は孔子とその弟子たちの言行をまとめた古代中国の書物ですが、論語に書かれている言葉を座右の銘というか、心のよりどころにしてる人も多いのではないでしょうか。学びについてもたくさんの論語があります。例えば、「学者は己のためにす」。これが、勉強は自分自身のためにする、そして、自分が社会の中で役立つために勉強する必要があるのだということを語っていると言えるでしょう。
 遠友夜学校校歌の複数のバージョンをはじめ、「新渡戸の夢」で流れてくる音楽がとても素敵なので、先日、映画音楽を担当した合田さんに「新渡戸の夢 音楽誕生秘話」をいつか話してほしい!と言ったところ、「喜んで!」と返事を頂きました。また、プロデューサーの並木さんからは遠友夜学校校歌の話を聞くことが出来そうです。決定したら報告します(田巻松雄)。